ファラリスの雄牛
たまに気象ニュースで取り上げられる程度には気温の高さで名の知れた町を営業で回っている。
自分が使う営業車は令和の時代にそぐわぬ旧型プレオ。
この車、窓の開閉がスイッチではなく前後左右レバーをぐるぐる回さないといけないタイプで、熱気を払おうにも容易に換気が出来ない。
冷房を効かせたとて、ものの五分十分離れて戻れば灼熱空間の再来である。そしてガソリンの使用量にも気を配らなくてはならない。
その空間にいる間、さながら古代ギリシアの処刑器具、『ファラリスの雄牛』に入れられた罪人のような気分である。
牛の形の鋳物に閉じ込められて、下から火で焼かれるあれだ。是非検索してみてほしい。
自分がこの車をあてがわれてから暑い盛りに何度か気をやりかけている。夏が絶頂を迎える頃、今年こそは会社に処刑されるかもしれない。