かわらの住人

群馬県より毒を込めて

去りゆく貴方へ贈る言葉

組織全体で見ると、三百人近くなる職場に現在自分は勤めているのであるが、コミュニケーションや付き合い、協調性といった類の言葉に重きを置かない自分には労働時間外でのお誘いは少ない。

 

そんな自分がお声が掛かる数少ない勢力の一つが『退職予備軍』である。


自分が今所属している職場は諸々の事情があって現在二社目である。


ともかく周りの人間にその事を特に隠さずにいるので、社内で同年代社員の『転職相談窓口』的な特異なポジションを確立しつつある。


確かに今の仕事は初めての職場であれば、辞めて他所の環境を見たくなるであろうブラックさはある(自分は一度そのカードを切ってしまったので余程の事がない限り二枚目は切れないが)。


自分は彼等に少し得意げに、なんなら先輩風をそよ風程度に吹かせながら、以前退職した際の経験や心境、退職後の手続き、退職のリスクなどの話をする。


自分の後押しであいつが辞めたみたいな感じになるのは、在職者に伝わった時の心象に関わるので、六対四くらいで引き止め寄りで話す事が肝要だ。


今まで実際に四人程の同僚達を見送ってきたのだが、毎回後に残るのは「転職するのは自分だけじゃない」「万一辞める時のハードルが下がった」などというなんとも浅ましい安堵感だけなのである。


同じ気持ちを一時でも共有した彼等とはその後二度と会う事は無かった。