二十うん歳の夏休み
以前参加した合コンで知り合った子と食事に行った。
特別女子と話す事が得意でもないし、相手も静かそうな子だし、冷静に考えるとどうして誘ってしまったんだろうと後悔していた。
もうこれは出たとこ勝負だと丸腰で洋食のお店で会った。
その合コン以来初めてその子と話したのだが、ちょっといいとこのお嬢さんみたいな潔癖な雰囲気と独特な趣味がある今まで接したことのないタイプの子であった。
また今まで付き合ったりした経験が無いらしく、ハードルの高さやら変な期待やら色んな思考が脳内を駆け巡った。
なんとかその会は事なきを得てお開きを迎えたのだが、手応え的になんとなくこれ以上はないのかなと思っていた。
寝る前に携帯を開いたらその子からラインが入っていて、お礼と今度一緒に出掛けたいです的な事が書いてあった。
しくじり先生並の失敗経験の蓄積で卑屈の極みにある自分には、未だにこのラインの真意が読めないでいる。
打ち上げ花火、斜めから見る
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を劇場で観て以来ぶりに視聴した。
当時は『君の名は。』の影に隠れてそこまでの話題にならなかったが、シャフトの粋を集めた名作である(原作は見ていないが)。
夏、田舎、山、海、ボーイミーツガール、白ワンピース、麦わら帽…etc
打ち上げ花火〜にも当てはまるのだが、並べているだけで歳を重ねた今でも心のざわつきを覚えるこれらのキーワード。
この感覚が分かる人となら飲めないアルコールも摂取できそうな気がする。
雨の夜道の怪
残業して八時頃職場を出た。
長い日も落ち切り、辺りは暗い雨の夜となっていた。
田の中の暗い道を走っていると、前方に二人乗りしている二輪車が走っていた。
二人とも黄緑色の雨合羽を着ていて自分の車の明かりに照らされ良く映えていた。
差をつけられる程速くもなく、追い抜きを試みる程遅くもないスピードでもって走っていたので、付かず離れずの距離感で自分も車を走らせていた。
車内のワンセグでは自分の気になる番組が流れており、注視し過ぎない程度にそれを見ていた。
そしてふと視点を前に返すと、さっきまで二人乗りしていた二輪車に一人しか乗っていなかった。
その一人はやはり黄緑色の雨合羽であるし、同じような二輪車なので似た別の車両というのも考えにくい。
そもそも降りる様子を見逃す程の気も逸らしてはいない。
狐につままれた様な心持ちで暫く走っていると、やがて二輪車は左へ曲がっていった。
曲がっていって少し小さくなったその二輪車を見ると、それはまた二人乗りで走っているように見えた。