かわらの住人

群馬県より毒を込めて

雨の夜道の怪

残業して八時頃職場を出た。

 

長い日も落ち切り、辺りは暗い雨の夜となっていた。


田の中の暗い道を走っていると、前方に二人乗りしている二輪車が走っていた。


二人とも黄緑色の雨合羽を着ていて自分の車の明かりに照らされ良く映えていた。


差をつけられる程速くもなく、追い抜きを試みる程遅くもないスピードでもって走っていたので、付かず離れずの距離感で自分も車を走らせていた。


車内のワンセグでは自分の気になる番組が流れており、注視し過ぎない程度にそれを見ていた。


そしてふと視点を前に返すと、さっきまで二人乗りしていた二輪車に一人しか乗っていなかった。


その一人はやはり黄緑色の雨合羽であるし、同じような二輪車なので似た別の車両というのも考えにくい。


そもそも降りる様子を見逃す程の気も逸らしてはいない。


狐につままれた様な心持ちで暫く走っていると、やがて二輪車は左へ曲がっていった。


曲がっていって少し小さくなったその二輪車を見ると、それはまた二人乗りで走っているように見えた。